視空間認知が成立するまでの「見る」ことのメカニズムとは

そもそも人はどのようにものを見ているのかというと、様々な機能を駆使しています。
そのうち視空間認知機能は一つのものにすぎません。

「見る力」として第一に挙げられる視力は目に見える物体を鮮明に捉える力のことで、静止しているものの形を見分ける力のことです。
しかし、視力が良いからといって見る力の働きが優れているとは限りません。

「見る力」とは、「入力」「情報処理」「出力」の3つのステップから捉えられます。これらは関連しあっていて、一つでもかけると見えにくさが生じ日常生活に影響を及ぼします。

1.「入力」=「眼球運動」…動いている物体を目で追いピントを合わせる
2.「情報処理」=「視空間認知」…目で見た情報を脳内で処理する
3.「出力」=「目と体のチームワーク」…目で見たものに合わせ体を動かす

視空間認知は2の「情報処理」にあたります。
人がものを見るメカニズムを以上の3つにわけてご紹介します。

1.「入力」=「眼球運動」

眼球運動の働きはものを目で追い視線を素早く動かしたり、両目を寄せたり離したりすることです。
この働きは「入力」にあたり、目の動きが適切に行えると情報を漏らすところなく目から取り込むことができます。

入力にあたる眼球運動の種類は次の3つに分類できます。

追従性眼球運動

一本の長い線や本に書かれた文字などをゆっくりと追いかける眼球運動がこれにあたります。
見ている対象物の動きに合わせて同じ速さで眼球を滑らかに動かす運動です。
また、対象物一つに焦点を絞って見つめ続けるのも、追従性眼球運動のうちの一つです。

追従性眼球運動が働くのは、空を飛ぶ飛行機を目で追うときや書き順を目で追うとき、ものをじっと見つめる時などです。

跳躍性眼球運動

ある一点から別の一点へ素早く視線を動かす眼球運動のことです。
対象物から別の対象物へ視線を移していく運動のことをいいます。
多くのものの中から必要な情報を早く正確に見つけるために必要な働きです。

例えば、板書とノートを交互に見るときや人混みの中から探している人を見つけるとき、本を読んでいて次の行に移る時などに働くのが跳躍性眼球運動です。

「両目」のチームワーク

人は両目を使うことでものの距離感や立体感を感じ取っています。
試しに片目を閉じて周りを見ると、このことが実感としてわかるでしょう。
両目で見るときに比べ、片目で見るときには周りの景色がまるで写真のような見え方をして違和感を覚えるでしょう。

私たちが普段両目でものを見るときは、ものとの距離感に合わせ、右目と左目の視線を変化させているのです。
対象物に焦点を合わせるため、近くのものを見るときは両目を真ん中に寄せ、遠くのものを見るときは両目を離すことで正しく距離感を認識しています。

以上の3つの眼球運動が正しく機能することで、目から情報を取り入れる「入力」のステップが完了します。